人気ブログランキング | 話題のタグを見る

植物の力を借りながら。


by sense_of_wonderY
カレンダー
S M T W T F S
1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30
31

折り合うということ。

川村カオリさんが乳ガン闘病中に亡くなった。
「愛をください」という歌のフレーズが耳に残るけど
「ZOO」というこの曲がヒットしていた時に、私は彼女の事は
ほとんどなにも知らなかった。







ロシア人の母と日本人の父の間に生まれ、「ZOO」がヒットしたのが
彼女が17歳くらいのときだったそうだ。
彼女は母親を乳ガンで亡くし、自らもまた同じ病に冒されたことで
とてつもない不安と闘っていたと思う。
幼い娘を女手1つで育てながら、病気と闘い、そしてなお、ライブ活動も
続けて来た。そのドキュメンタリーをなんどかテレビで見た。
私はその番組を通じてしか彼女の事を知らなかった。
そして訃報に接し、彼女が享年38歳だったこともそのとき知った。

38歳で幼い娘を一人残して逝く事がどんなに心残りで、
想いの残るものだったか、想像するだに胸が痛む。
自分の母の命を奪い、今また自分も同じ病で余命が短いと知ったとき
娘が同じ病にならないか、とそれだけを心配しただろうか。
そしてもしもそうなったときに、そばにいてやれない、母親としてそんな
思いを抱えての闘病だったのではないか?
もう体力的にもかなりつらいだろう時に、娘をつれてロシアの祖母を
訪ねるシーンがあった。病気の事は秘密にして・・・
そして彼女の母親の墓の前で「おかあさん、どうしようか・・・」と
母に問うている彼女の姿がとてもとても切なかった。
今また、自分が娘をおいて先に逝かなくてはならないのだから。

大学院の同期だった友人が、やはり38歳で亡くなったときに
私はその事実をしばらく受け入れられずにいた。
いや、今でもどこかでは信じていないのかも知れない。
お葬式にも参列して、健康そのものだった彼の変わり果てた姿にお別れもしたし
その後、3周忌だったかの年にやっとお墓参りをする事もできて、
それでなんとなく心のどこかで折り合いをつけていたのだけど
今でもただ連絡がとれないだけで、どこかで元気にやってるんじゃないか、
というような気がする。
実際に、元気でいるが何年も連絡をとることもなく過ごしている友人が
たくさんいて、そういう友人と、亡くなってしまって会う事が出来ない友人と
その境目がわからない。

「生きているのに、連絡もとらない人と、死んだ人とは同じこと・・・」

うろ覚えだが、そんな内容の歌があった。
同じ事、とまでは思わないが、その違いがわからない。
ただ、葬式があって、荼毘に付されてお墓に入ってしまった・・・
その別れの儀式に立ち会ったということが、私の心の中で、彼の死と折り合うという
1つの区切りみたいなものになっているに過ぎないような気がする。
もちろん、彼の残された家族とか、ごく近しい友人といった人の中では
大きな傷跡になっているのは事実だし、
確かにこの世にはもう彼が存在しなくて、
幸せに楽しく過ごしている(または辛い状況で苦しんでいるにしても)
そういう彼はもういないわけなのだから、あくまで私本意の勝手な解釈に過ぎない。
でも、私の中でうまく腑に落ちないまま時間だけが過ぎているのは確かなのだ。

折り合いの付け方、ということにおいては
我が身に降り掛かるできごとが、たとえば親しい人の突然の死みたいに
理不尽なら理不尽であるほど、うまく折り合えないでいる。
どこにどうしまっておけばいいのか、自分の感情が処理できないまま
古い澱のようになって積もっている場所があるのだろう・・・
そうした澱を普段の生活では忘れていられるのだけれど、あるときふと
その引き出しがあいてしまったりして、またその理不尽さとか、やりきれなさとか
そういう処理しきれない感情と向き合ってしまう。
それでもまあ、なんとか折り合いをつけて生きている。
そうでなかったら、たぶん生きている事自体がそうとう辛い事になって
本当に苦しいんだろうと思う。

年をとってもこういう折り合いはなかなかつけられるものではなくて
大人になればむしろ、よけいにそういうものを避けて通れなくなる。
10代までに形成された人間性の土台に20代、30代で肉付けをして
あとはその経験によってしか、生きて行けないものなのかもしれない。
もちろん、この年になって獲得することもたくさんあって、それは大切な財産だが
それを獲得する為には、20代までの倍以上の努力が必要なるように思う。
時間にしても、お金にしても、体力・気力にしても。
どんな経験も無駄になるなんて事は1つもないと思う。
だからこそ、おそれずに経験する事は大切だとも思う。

かわいい子には旅をさせよ、という言葉通りに我が子にそれができるか。
この年になってくると、自分もだが、子供により多くの経験をさせたいと
願ってしまう・・・
by sense_of_wonderY | 2009-07-29 14:03 | 日々の思い。